今年は、現代のチベット映画を牽引してきたペマ・ツェテン監督の突然の訃報があまりにもつらく…
チベット映画、『一个和四个』(一人と四人)が中国で劇場公開され、その制作陣にプロデューサーとしてペマ・ツェテン監督の名前があると思ったら、監督のジグメ・ティンレーさんは息子さんだったんですね!
映画紹介で、雪山の『羅生門』と言われていましたが、見終わってまさに!と
【あらすじ】(ネタバレあり)
密猟が横行する雪山。
山小屋の管理人・サンジ(ワイルドな金巴・ジンパ演じる)の前に、森林公安を名乗る血だらけの男(王铮・ワン・ジェン演じる)が銃を手に部屋に入って来る。
↑一人で山小屋に泊まり込んでいる森林管理官・サンバ
(長瀬智也をさらに超ワイルドにしたような、チベットの名優・金巴・ジンパさん。
骨にかぶりついて肉を食べるシーンが個人的には萌え)
↑小屋にやってきた第一の男。「俺は森林公安だ!」と公安番号も見せる。
男は密猟者を追っていたが見失い、だがこれから吹雪になるから、必ず密猟者はこの小屋に来るはずだと言う。
応戦するために、2人は車まで拳銃を取りに戻る間に、チベット人の悪友・ガンポ(更旦・クンデが演じる)が小屋を訪れている。
調子のいいガンポは見るからにあやしく、公安にしばりあげられる。
(調子のいいチベット人を好演するクンデさん。こういう人、いそうという絶妙なところ。
彼とサンバの会話から一気にチベット語になりますが、ほぼ聞き取れず、必死に字幕を追いました)
ガンポが山で密猟者が隠した袋を見つけたと言い、それを探しに行く間に、今度はもう一人の血だらけで「俺こそは森林公安だ」と言う男(达杰丁增演じる)が、こちらも銃を手にやってくる。
ラストは部屋の中で四人が対峙。
自称森林公安の2人は、お互いに相手がニセモノで、信じるな!という。
管理人のサンジはどっちを信じていいのか戸惑い…
怪しいチベット人も、俺じゃねえよ…と。
(ラストのネタバレあり)
最後は疑心暗鬼のまま、撃ち合いに!
サンジが呆然と立ちすくみ、
小屋の扉を開ける鹿、
部屋の中では3人が死んでいる。
そして、止まっていた時計が動き出す。
結局密猟者は誰で、誰が本当のことを言っていたのか?
真実はやぶの中ならぬ、吹雪の中…
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ラストを見て「えええーー」どうだったの?とすごく色々気になり。
サンバが一生懸命覚えていた2人が見せる公安番号に何かあるのかなあとか、
何かヒントを見逃したかなあとか。
でも、そういういろいろな可能性を推理しながら引き込まれるのが、『羅生門』的よさなんだと。
ところがです、中国では犯罪映画の公開には、最後に必ず悪い犯人は逮捕されましたという字幕の掲載が必要になっていて…
映画の最後にばっと出たのですが、私はちょっと読み切れず。
ネットでなぞ解きが盛り上がっていて、こちらをチェック。
背の低い男が殉職し、
チベットのガンボは密猟者の仲間だったと。
(名前は出ずに、背が低い男というところがにくい)
背の高さでいうと、最初に小屋にやってきた自称・森林公安が実は密猟者だということ!? (最後に来た背の低い男が実は公安で殉職)
予想と反対で、それもびっくり。
いろいろな推理が楽しめる映画だと思います。
ジグメ・ティンレー(久美成列)監督:
1997年生まれの若き才能。青海省出身。
この作品が初の長編制作。
北京電影学院の卒業制作として制作を始めた作品。
2019年12月にクランクインするも、コロナで撮影が停止し、2020年の冬に再度撮影。
2020年上海国際映画祭や2021年北京国際映画祭で上映され、数々の賞を受賞。
中国大陸では、2023年10月23日にやっと劇場公開されました!
上映館が少なすぎて残念。私もやっとレイトショーで見れました。
『一个和四』(一人と四人)One and Four
監督:ジグメ・ティンレー(久美成列)
プロデューサー:ペマ・ツェテン
主演:金巴(キンバ)、王铮(ワン・ジェン)、更旦(クンデ)、达杰丁增
尺:88 分
中国での劇場公開は2023年10月27日
後半のセリフの応酬は、かなりチベット語(アムド語)です。
映画の中でめっちゃ「怂 sǒng/sóng」って言ってましたね。
ビビりやがって、みたいな感じかな。
2021年に東京国際映画祭で上映した時の監督インタビューの映像↓
それにしても、北京電影学院の卒業制作からすごい作品が次々と誕生していますね。
こちらも同じ、北京電影学院の卒業制作で作られた長編映画です。↓