「中華オタ」の推し活記録

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胡歌主演映画『不虚此行』のレビュー

今年は、国慶節(10/1)の前に、中秋節(9/29)があり、大型連休が早めにスタート。

映画の公開も9月29日からは国慶節期間の映画にがらっとほぼ全部入れ替わってしまうので、その前に慌てて見に行ってきました。

 

大型休みの前の谷間には、作家性の強いいわゆる商業映画でない作品がかかることが多いのですが、上映期間がどれも短くて、うっかりすると2週間で上映館がなくなるというケースも。

 

駆け込みで見てきたのは、私の推しの俳優・胡歌主演の『不虚此行』

ポスターの一番右が、胡歌。

 

【あらすじ】(ネタバレあり)

胡歌演じる聞善は、「追悼文」専門の作家。

脚本家として最後まで書き上げることができず、夢破れて、葬儀場でそこに集まる人たちの「観察ノート」を書いていた時に、スカウトされる。

映画の中では、追悼文を書いてほしいい遺族たちの話を聞き、その人生に寄り添いながら聞善が追悼文を書く様子が描かれる。

オムニバス形式のように展開しながら、聞善自身の物語も展開していく。

 

最初の依頼者は、父を亡くした息子。

父親を北京の家に引き取り、最後は一緒に暮らしていたのに、仕事が忙しいことを理由に、父親と交流をしてこなかった息子。

自分の父親のことを全然知らなかったことに気がつく。

聞善が追悼文を書いていることを知り、孫息子が話したいことがあるという。

実は父親は、ずっと息子と一緒に田舎に帰り、いろいろ語り合いたかったと…

(左の父親を亡くした息子役、黄磊ファン・レイです!

 あのきらきらしていた王子様キャラの黄磊が…。でも演技はさすがでした!)

 

他にも、北京の火鍋チェーン店のオーナーの三兄弟の物語。

一番上の兄が亡くなり、下の弟と妹が、昔の家族の愛憎を食い違いながら思い出し…

北京らしい火鍋の石炭の炎が美しく。

 

そして、ネットのアフレコ仲間としてつながっていた彼が、ある日突然消息を絶ち。

手を尽くして調べたら、実はうつ病で自殺していたことが分かり。

追悼文を書いた聞善のところに押しかけて来た彼女。

遺族から資料として預かっていた音声資料を聞き…

 

心を動かされたのは、ガンで余命を宣告された女性が、生前に自分の追悼文を依頼した物語。

2年間、彼女との心の交流を経て、

最後は、聞善の初めての作品として、名前入りの冊子で葬儀で配られる。

 

同時進行に、北京で暮らす聞善の生活が少しずつ明らかになる。

年下のタイプが違う同居人の小尹(呉磊が演じる)。

『今日何を食べた?』的な、ちょっと年下のCP雰囲気でよい感じ。

でも、親には一人暮らしと言ったり、ちょっと不思議な雰囲気。

(と、丁寧な下準備があり…)

 

聞善のところに、故人の音声ファイルを聞かせろと女性が押しかけてきたところで、この同居人が見えていないことが、なんとなく予感されます。

そして「小尹」(シャオイン)という名前が書かれたホワイトボードの前で、実は同居人の彼は実在しない、聞善の書いていた物語の登場人物だと分かり…

尹という苗字だけで、名前ももらえないまま、脚本は仕上がることがなく、聞善のそばで架空に生き続けていたのだと。

映画のラストでは小尹の姿が消え、聞善はパソコンに向かい、小尹の名前をつけて脚本の続きを書き始めます。

 

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一人一人の物語が描かれる小粒ないい映画だなと。

「小尹」の設定が、監督としては肝いり出し、ポイントなのでしょうが、

同居人っぽく暮らす2人の雰囲気がとてもよく(同性愛表現禁止の中国では、このくらいのふわっとした表現なのかなと思いつつ)、だからこそ小尹が実は架空のキャラだったというオチはちょっと惜しいかなと。

やっぱりね、というか既視感が出てしまう設定だった気がします。

よくあるというか。

個人的な感想ですが。

でも、聞善が家に帰ってきて、洗濯機を回すときに、はいてた靴下を脱ぎながらぽいぽいって入れるところとか、いけずな猫とか、きめ細かい描写はすごくいいなと。

 

監督は、「劉伽茵」さん。1981年北京生まれ。

ボーイッシュな女性監督です。

いまは、北京電影学院文学科の助教授なんだとか 。優秀だなあ。

(百度より)

 

 

『不虚此行』All Ears

監督・脚本:劉伽茵

出演:胡歌、呉磊、斉溪、娜仁花 、黄磊

中国公開日:2023年9月9日

尺:118分

ロケ地:北京

公開後5日間で、興行収入2000万元突破