中秋節・国慶節期間に公開された張芸謀(チャン・イーモウ)監督の新作映画『堅如盤石』。
タイトルの「堅如盤石」[jiān rú pán shí]は、「堅きこと盤石のごとし」という四字熟語ですね。
国慶節期間中の映画興行収入のトップで、公開14日間で興行収入10億元を突破しました。
汚職と犯罪にまつわる血なまぐさいサスペンス映画です。
久々に暴力的な現代舞台の中国映画を見たなあという感想。
一家団らんの中秋節の公開によくこの映画を当ててきたなと。
作品としても、張芸謀監督の反骨精神を感じる部分があり。
レイトショーで見に行ったのですが、小学生連れの家族もいて。
中国はそういえばR指定はないなあと。
日本ならR指定間違いなしな、かなり暴力的な展開も続々で、映画館で思わず何度か声が出そうになるほど衝撃のシーンも。久々に中国で攻めてる現代映画を見たという印象です。あと、ロケ地の重慶の街の感じがとてもはまっていて、構図や光の使い方などさすがでした。
【あらすじ】ラストまでなので、ネタバレあり
映画は、バスジャックから始まる。
犯人の要求は、副市長・鄭剛(張国立が演じる)の悪行を暴くこと。副市長が話をしようとバスの犯人に歩み寄るところで、犯人は自爆。
この事件を追うのが、副市長の息子で、鑑定専門の刑事・蘇見明(雷佳音が演じる)。実は蘇見明は養子で、実の息子ではないから出来が悪いと自嘲的だ。
事件の犯人はすぐに捕まるが、実はその背後には巨大ディベロッパー企業の犯罪が隠されていて、担ぎ屋からのたたき上げ社長・黎志田(于和偉演じる)が蘇見明に近づく。
だが、捜査が進んでいくうちに、父親の鄭剛と黎志田は黒い絆でつながっていて…。
周りを信じられなくなった黎志田は、跡継ぎにしようとした娘婿を惨殺する。
そして、ビルの壁がたまたま壊れ、奥から女性の白骨死体が見つかる。
それは、鄭剛と黎志田の悪事を知ったために、黎志田に殺された鄭剛の愛人だった。
愛人は、自分の姪に悪事の証拠が入った携帯電話を残していた。
実は蘇見明は、鄭剛とこの愛人の息子だったことが分かり…
最後は証拠の携帯電話の奪い合いになり、蘇見明の同僚であり元カノの李慧琳(周冬雨が演じる)は殉死。(ラスト近くに結構衝撃的な殉死シーン)
ラストは全ての悪事が暴かれ、悪者は逮捕され、めでたしめでたし(という現在の中国のお決まり)でした。
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汚職と家族の愛憎が同時進行する緊迫した物語進行。
脚本は『満紅紅』の陳宇ですが、彼がうまいのだなと。(普段は自分で監督もしているよう)
そして、実力者揃いの俳優陣で、見ごたえがありました!
主演の陳国立は、本当にうまいですね。いい人だけど、裏の顔がありそうな感じが、絶妙でした。
中国で副市長というのは、日本の県知事くらいの地位ですよね。
↓中央が陳国立。バスジャック事件後の冷え切った家族の食事シーン。
そして妻役の陳冲の背筋の凍る演技に背筋が凍り。こういう女性を敵にするのが一番怖いです。
「士農工商よ、分かるわね」(身分をわきまえなさい)
(一つの家で見る異なる夢)
そして、もう一人の主役は、ダメな養子役の雷佳音。
最近注目ですね。「満紅紅」からの抜擢のよう。
古田新太の若い頃の感じ?
さらにその元カノ役にポスト周迅の周冬雨。(張芸謀の好きなタイプな気がします)
今回はダブル眼鏡で、メガネ萌えです。
ただ、このあと彼女には壮絶な死が…
もう一人、金持ち社長・黎志田が溺愛する愛娘役を陳童。
あまりの溺愛で、娘婿を殺してしょまうほど。
こちらも張監督が好きそうな…
おまけに久々の陳道明がゲスト出演など、うまい人しか出てない、という感じでした。
お久しぶりの陳道明。この写真はだいぶ若い頃ですね。
ただ、残念ながらラストの法律に適応させた辻褄合わせが少々ガッカリ。悪人は全部逮捕されて罰を受けたと字幕でも処理しないといけない法律ができたようで…。
この作品、公開にあたってかなりカットしたともネットで言われていますが、海外で配給するディレクターズカット版なら、もう少し違うラストが見られるのかなあとも。
今の時代にどこまでできるか、張芸謀のチャレンジ精神を感じた作品でした。
中国では2023年9月28日に公開でしたが、10月19日からアメリカ、カナダ、オーストラリア、シンガポール、イギリス、アイルランドで公開になっているとのこと。
日本の公開はいつでしょうか?
『堅如磐石』
Under the Light
出品公司:北京光線影業有限公司、東陽瀚麗影視文化有限公司
撮影期間:2019年5月26日 ~ 2019年9月13日
主なロケ地:重慶
監督:張芸謀
脚本:陳宇主
出演:雷佳音、周冬雨、張国立、于和偉
尺:127分