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映画レビュー『吾愛敦煌』 ~敦煌の娘:樊錦詩の物語~

映画もちょこちょこ見ているのですが、なかなかレビューが追いつかず。

少し前になってしまいましたが、敦煌(莫高窟)を舞台とした映画『吾愛敦煌』を見ました。

 

「敦煌の娘」と呼ばれる敦煌研究院第三代目の所長・樊錦詩さんの生涯を描く物語

【あらすじ】

物語は、1963年に樊錦詩さんが北京大学(専門は歴史考古学)を卒業して、敦煌研究院に分配されたところから始まります。

家族は上海、夫は武漢と離れ離れの生活。

当時は、莫高窟の石窟の周辺は道も整備されていなくて、毎日25キロ歩いて通うという過酷な状況。

その中でも、武漢から訪ねて来た夫との莫高窟での場面は、古き良き青春のいい雰囲気。

そして誕生した息子は、夫が武漢で育てることに。

 

中盤まで面白いなあと思ってみたいのですが、

80年代に若い人がやってくるようになり、60歳から3代目所長になり、

90年代末に未来に残すデジタル化事業が始まり…

というあたりになってくると、そこを深堀りするよりはという気持ちにもなり。

デジタル化事業とか、いま力を入れて進めているのはわかるのですが、それを映画で入れなくても…と。

 

もっと莫高窟と彼女の物語を情感的に描けたのでは?という気持ちに。

壁画の物語を読み解きながら、そこに彼女の人生がクロスしていく…みたいな描き方もあったのではと思いながら見ていました。

 

映画は実際に莫高窟で撮影

(さらには、見覚えのある実際の敦煌研究院のスタッフのみなさんもちらほら出演しているのを見かけ)

やはり本物は強いなと!

ですが、映画最後のテロップでも説明があったように、壁画を保護するために照明を当てたりするのは制限して撮影していたようです。

そのため、壁画自体をはっきり見るというシーンがなかったのは残念でもあり。

映画を見るほうは、そこをどうしても期待してしまいますよね。

 

映画は青年期と壮年期で2人の俳優さんが演じていました。

鼻をすすったりは本人のくせなのかな?そのあたりも完コピしていて、

雰囲気は出ているなあと。

ですが、エンディングでご本人が登場され↓、ご本人のパワーにはどうしても負けてしまうなあと。

(最後はご本人が演じたほうがよかったと思ってしまうほど)

樊錦詩さん:

1938年、北京生まれ。1963年、北京大学卒業後、敦煌文物研究所(現敦煌研究院)に入所。

 

樊錦詩さんが書かれた『敦煌石窟 精選50窟鑑賞ガイド』は日本語にも翻訳されていますが、一般向けに莫高窟の各石窟を解説した書では一番ではないかと思っています。

この中に出てくる壁画の物語などを映画にいれるだけで、もっと世界が広がっただろうに…と残念なところ。

あと、最後のちょっと冷めてしまったのは、エンディングで監督?がご本人とやりとりする場面が結構な尺で出てきたこと。

これは、メイキング映像で別にしてほしかったなあというところ。

(入れたくなる気持ちはわかるのですが)

 

『吾愛敦煌』(吾爱敦煌)

 英語タイトル:Great Love Dunhuang
 出品会社:峨眉電影集団 他
 配給会社:上海淘票票

 監督/脚本:苗月

 出演:陳瑾、林永健、黄品沅、張政勇、宮哲、李沐然

 尺:101 分
 中国公開:2023年11月17日