端午節の連休期間から公開されて話題になっている
中国国産映画『消失的她』(xiāo shī de tā )
『消失的她』
2023年6月22日公開。122分
公開18日目にして、興行収入31億元(約618億円)を突破という大ヒット。
中国における犯罪映画ジャンルの興行収入ではトップです。
猫眼サイトより
おめでとう、「破31億元」のポスター。
猫眼サイトの口コミ評価も9.2点(67万人が評価、5つ星が85.5%を占める)という高評価。
総観客数も、のべ7540万人を突破しています。
猫眼サイト(2023.07.11)
監督は新人に近い2人ですが、脚本を書いたのは監督として『唐人街探案』で大ヒットを飛ばしている陳思誠(チェン・スーチェン:1978年生まれ)。
監督作の『誤殺』(2020年公開)も犯罪物映画として話題になった作品。
監督作品の興行収入は122億元を突破し、歴代第2位なんです。
(第一位は徐克 ツイ・ハークで146億元超え。『長津湖』の大ヒットが大きく)
さてさて、映画がどんな話かというと…
【あらすじ】
旅行先の島国・バランディアで妻がいなくなって半月。
夫(朱一龍が演じる何非)が警察に捜索してほしいと訴えるも、けんもほろろに追い返されるところから映画は始まります。
「死体がなければ事件としては捜査できない」
打ちひしがれていると、一人の中華系警察官が声を掛けてきます。相談に乗ると。
そして、夫に残された滞在ビザの日数はあと5日。カウントダウンが始まります。
映画はこの5日間の物語です。
酒を飲んで眠った男は、目が覚めると知らない女が隣に寝ています。
叩き起こすと、女は「あなたの妻」だと。
こんな女は知らないと訴えても、いつの間にかパスポート、入管での写真、ホテルの従業員の証言、スマホの写真まで全てが、自分の妻として目の前の女の姿にすり替わっています。
はめられたと男がいくら叫んでも、薬を服用している夫の妄想と暴力癖がひどいと妻は警察も味方につけ…。
一体、真相はどこにあるのか?
男は敏腕の女性弁護士・陳麦(倪妮が演じる)に依頼し、ニセの妻の正体を暴こうとしますが、2人とも大きな裏の組織に命を狙われます。
男に全て真相を話すように迫る陳麦。
男の告白とは?そして衝撃の結末…。
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途中まで、一体どういうことなのか手に汗握る展開でかなり引き込まれました。
ネタバレになるので、最後の「反转fǎn zhuǎn」(どんでん返し)の内容は伏せておきますが、それがさすがに…と。ちょっと乗り切れず。
たしかに伏線もよく回収されてるし、破綻もなく結末まで走り抜けてるのですが、途中までがすごく面白かっただけに、ひっくり返し方は厳しいかなあと。
そして、何より最後の終わりの後味がとても悪く。(個人的感想です)
「彩蛋cǎidàn」と呼ばれるエンドロールのあとのおまけ映像で、あったかもしれないある回想シーンが出てきましたが(もうその時点で映画館は明かりもついて観客はみんな帰っていましたが…)それが幸せすぎる場面で、でもバッドエンドのあとにこれがあっても救われないなあと… なんだかもやもやしたまま映画館を後にしました。
映画のキーワードになる中国語メモ:
真相[zhēn xiàng]、一见钟情[yī jiàn zhōng qíng] 一目ぼれ、
赌徒[dǔ tú]ギャンブラー、闺蜜 [ guī mì ] 女性同士の親友
文森特·威廉·梵高(Vincent Willem van Gogh)フィンセント・ファン・ゴッホ
映画ではゴッホの「星月夜」が裏テーマに。
主演の俳優陣の演技は文句なしに素晴らしかったです!
特に朱一龍(チュー・イーロン:1988年生)!!
色白のすらっとしたイメージのでしたが、今回の映画ではなかなかマッチョだなと。
そして、目を痙攣させたり、人間の裏面が引き出されてきたりと、迫真の演技でした。
主演作品の興行収入は100億元に迫る勢いで、中国全体でも28位と急上昇。
敏腕弁護士、そうしてもうひとつの顔をもっていた倪妮(ニー・二ー:1988年生まれ)。
サバサバした闊達な女性でありながら、時々涙目になる演技にはぐっときました。
レイトショーを見て映画館を出たらショッピングモールの照明が落ちてて、怖さ増し。
途中で、東南アジアの旅行で妻が失踪した別のエピソードがインサートされたのですが…
妻が更衣室に入ると、その床が抜けて闇の組織へ。
夫は警察の手も借りて、必死に探しても妻は見つからず。
数年後、夫が出張で別の東南アジアの国に行った際に、ショーを見ていたら、そこに手足が切り落とされて鳥かごに入れられた妻の姿があり。
妻は夫の姿を見つけて、声にならない声をあげる…。
更衣室が裏につながっていて行方不明になるとか、手足を切り落とされてだるまにされるという都市伝説は昔はよく聞きましたが(タイだったり、香港だったりの話として)、それを実際の映像にしてしまうといのは今の中国的という気もします。
ホラーはNGと言いつつ、こういうのは審査に引っかからないのが不思議。
中国国内ではなく、東南アジアの架空の国にしているのもみそかもしれません。
なんだか明るい映画で口直ししたい気分です。
夏休みが近くなり、コメディ映画も上映を控えているので、次回は明るく。